民法改正のイメージ

民法(相続関係)改正について

民法のうち相続法の分野については、昭和55年(1980年)以来、実質的に大きな見直しはされてきませんでした。

しかし昨今の社会経済情勢の変化に対応するためには、大きな改正が必要となり、配偶者の居住の権利を保護するための方策等、約40年ぶりとなる改正には様々な改正項目が盛り込まれることとなりました。

ここでは、相続法改正のポイントを解説致します。

相続法改正 《5つのポイント》

1. 配偶者の居住権を保護するために「配偶者居住権」が新設されました

「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認める(配偶者の居住権を長期的に保護する)というものです。

これにより、配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになります。

2. 遺言制度に関する見直しが行われました

①自筆証書遺言の方式が緩和されました。

従来は、自筆で遺言書を作成する場合には、遺言書の全文を自筆する必要がありました。
今回の見直しにより、財産目録はパソコン等で作成したり、通帳の写しを添付することができるようになりました。

②法務局での遺言書の保管が可能となりました。

従来は、自筆証書遺言は自宅で保管されることが多かったため、紛失・改ざん等のおそれがあり、これらの問題により相続が争続(争族)になる可能性がありました。
今回の見直しにより、法務局での遺言書の保管ができるようになりました。

3. 遺留分制度に関する見直しが行われました

従来は、遺留分減殺請求権の行使によって財産の共有状態が生じることがありました。
今回の見直しにより、

①遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化すること。
②金銭を直ちに準備できない場合には、裁判所が、金銭債権の全部又は一部の支払につき、相当の期限を許与することができる。

というようになりました。

4. 相続人以外の者の貢献を考慮するための制度(特別の寄与の制度)が設けられました

従来は、相続人以外の者は、どれだけ被相続人の介護に尽くしても、相続人でないため遺言がなければ相続財産を取得することができませんでした。

今回の見直しにより、相続人以外の被相続人の親族(例えば、同居している長男の妻等)が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件の下で、相続人に対して金銭の要求をすることができるようになりました。

5. 遺産分割等に関する見直しが行われました

①従来は、夫婦間で居住用不動産の贈与がされた場合には、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われたため、贈与を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されない可能性がありました。

今回の見直しにより、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱う必要がなくなり、結果として配偶者は、より多くの財産を取得することが可能となりました。

②従来は、遺産分割が終了するまでの間は、相続人単独で預貯金の払戻しができませんでした。

今回の見直しにより、預貯金の払戻し制度が設けられ、一定額については、相続人単独での払戻しが認められることになりました。